さて、前回はインボイス制度の税制改正の解説をさせていただきました。その中でも消費税の計算方法に関する特例措置である「2割特例」が免税事業者から課税事業者にとって一番影響があるのではないでしょうか。
また、免税事業者でない事業者についても、インボイス制度による登録番号の交付を受けるためには税務署へ申請書を提出しなければなりません。
そこで今回は、インボイス制度に関する届出書について解説していきたいと思います。まだ、登録番号の交付申請書を提出していない事業者や既に申請書を提出している事業者の方も、提出漏れなどがないかどうかを確認してみてください。
インボイス制度については登録番号の交付を受ける場合、事前に税務署へ申請書を提出しなければなりません。そのため、消費税の課税事業者や免税事業者など、納税義務の有無にかかわらず、登録番号の交付を受けたい場合は申請書の提出が必要になります。また、申請書の提出期限は令和5年9月30日となっています。
ただし、登録番号の交付を受けるための申請書のほかに、消費税の計算方法を選択する届出書の提出も検討する必要があるため注意が必要です。まずはインボイス制度に関する届出書の種類について確認していきましょう。
インボイス制度に関係する届出書は主に4つあり、
①適格請求書発行事業者の登録申請手続(国内事業者用)
②適格請求書発行事業者の公表事項の公表(変更)申出書
③消費税簡易課税制度選択届出書
④消費税課税事業者選択届出書
大きく分けて、インボイス制度に関する届出書と、消費税に関する届出書があります。
適格請求書発行事業者の登録申請書は、適格請求書発行事業者の登録を受けようとする場合に提出が必要な書類です。この申請書については国内事業者向けの様式と国外事業者向けの様式があり、登録番号の交付を受けようとする会社の状況に応じて適した様式の申請書を提出する必要があります。
適格請求書発行事業者の登録申請書の詳しい記載方法は、国税庁ホームページをご確認ください。
引用:[手続名]適格請求書発行事業者の登録申請手続(国内事業者用)|国税庁
インボイス制度においては、国税庁ホームページで適格請求書発行事業者の情報が公開されることとなっています。その公表事項について、次の項目を追加公表する場合または、変更する際に適格請求書発行事業者の公表事項の公表(変更)申出書の提出が必要になります。
・屋号
・本店所在地
・主たる事務所の所在地
・外国人の通称
・旧姓氏名
インボイス制度が始まると、取引先が本当に適格請求書発行事業者の登録をおこなっているのかどうかを確認する必要があります。その際に、法人名や個人名だけでは判断ができない場合も想定されるため、普段、屋号などで取引をおこなっている事業者は屋号の追加公表をすることをおすすめします。
適格請求書発行事業者の公表事項の公表(変更)申出書の詳しい記載方法は、国税庁ホームページをご確認ください。
引用:[手続名]適格請求書発行事業者の公表事項の公表(変更)申出手続|国税庁
消費税簡易課税選択届出書は、消費税の簡易課税制度を選択しようとする場合に提出が必要な届出書です。
簡易課税制度とは消費税の計算方法の1つで、本来は適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに提出しなければなりません。
「えっ、それじゃあインボイス制度が始まる10月1日からは簡易課税を選択できない?」
となりますよね。
しかし、インボイス制度が始まるのが令和5年10月1日からということもあり、令和5年に限り特例が認められています。特例については、令和5年10月1日から適格請求書発行事業者の登録を受ける場合、令和5年12月31日までに簡易課税選択届出書を提出することで、令和5年10月1日から簡易課税の適用が認められるものとなっています。
消費税簡易課税制度選択届出書の詳しい記載方法については、国税庁ホームページをご確認ください。
引用:[手続名]消費税簡易課税制度選択届出手続|国税庁
消費税課税事業者選択届出書は、本来、消費税の免税事業者である事業者が消費税の課税事業者を選択する場合に提出する届出書です。原則の提出時期としては、消費税の課税事業者となる課税期間の初日の前日までに提出しなければなりません。
「それじゃあ、令和4年12月31日までに提出したら令和5年1月1日から課税事業者になるの?」
と思われるかもしれませんが、こちらの届出書も特例があり、令和5年10月1日から適格請求書発行事業者の登録を受ける場合、令和5年10月1日から消費税の課税事業者となります。
また、免税事業者が登録を受けるためには、原則として、消費税課税事業者選択届出書を提出する必要がありますが、令和5年10 月1日から令和11年9月30日までに登録を受ける場合には、消費税課税事業者選択届出書を提出しなくてもよいとされています。
引用:適格請求書等保存方式(インボイス制度)の手引き|国税庁
消費税課税事業者選択届出書の詳しい記載方法については、国税庁ホームページをご確認ください。
引用:[手続名]消費税課税事業者選択届出手続|国税庁
上記の4つの届出書は必ず提出しなければならないものではありません。それぞれの状況に応じて提出が必要であるかを確認することが重要です。ここでは、届出書を提出する際の注意点を3つ紹介します。
まず1つ目が提出する前の確認です。何度も言うようですが、インボイス制度について適格請求書発行事業者になるかどうかは「任意」です。そのため、登録するかどうかは事業者の判断に委ねられています。
「周りが登録するから、私も登録しておこう」
「取引先に言われたから、私も登録しておこう」
などのように判断するのではなく、
・適格請求書発行事業者の登録をおこなうことで発生するメリットとデメリット
・適格請求書発行事業者の登録をおこなわないことで発生するメリットとデメリット
上記を確認したうえで、登録したほうがよいのかを判断するようにしましょう。
2つ目の注意点として、提出期限に注意することが挙げられます。届出書には必ず提出期限が設けられています。今回は特例により提出期限が変更されているものもあるため、必ず提出期限を先に確認しておくようにしましょう。
3つ目の注意点として、届出書の控えをもらうようにすることが挙げられます。届出書を電子申告する場合は手元に控えが残りますが、税務署窓口に提出する場合や郵送する場合は原則として控えが手元に残りません。控えをもらうためには、
・窓口提出の場合・・・提出用の届出書と控え用の届出書を提出し、控え用に受領印をもらう
・郵送の場合・・・提出用の届出書と控え用の届出書、返信用封筒を同封して控え用の届出書を返送してもらう
といった対応が必要となります。
税務署に行くことで届出書の閲覧などをおこなうことはできますが、コピーがもらえないなどの制限があるため、なるべく提出時に控えをもらうようにしておきましょう。
いかがだったでしょうか。インボイス制度に関する届出書は登録申請書だけとは限りません。場合によっては消費税の計算シミュレーションなどをおこなったうえで、届出書の提出を検討しなければならないケースもあるため、慎重におこなっていく必要があります。また、消費税の計算シミュレーションについては、非常に複雑となるケースもあるため、少しでも疑問や不安がある方は、まずは気軽にご相談ください。
次回はインボイス制度が始まってからの実務のやりとりについて解説していきたいと思います。経理担当者は特に必見です!
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